近年、人材不足が深刻化する中、「短期退職」が注目を集めています。1年以内に自己都合で退職する「短期退職」は、労働者にとってキャリアの転換点となる一方、企業側には人材流出という課題をもたらします。今回は、024年に株式会社ネオマーケティングが実施した調査を基に、短期退職者と人事担当者双方の視点から、短期退職の実態と転職に関する重要なポイントを探ってみましょう。
新卒と中途で短期退職の傾向に差
調査結果によると、新卒入社と中途入社では短期退職の傾向に違いが見られます。
新卒入社の場合、1年以内の退職が最多で29.0%でした。一方、中途入社の場合は3か月以内の退職が最多で22.6%となっています。
さらに興味深いのは、3か月以内の退職率を比較すると、新卒入社が46.6%なのに対し、中途入社は57.7%と11.1ポイントも高くなっている点です。この結果から、新しい職場環境に馴染むことの難しさや、ミスマッチの早期判断の重要性を考える必要があります。中途社員は、過去の経験から適応の限界を感じた際に、迅速に退職を決断する傾向が強いことがわかります。
短期退職を考える際のポイント
- 新卒入社の場合、1年間は様子を見る余裕がある可能性が高い
- 中途入社の場合、3か月以内にミスマッチを感じやすい
- 転職を考える際は、特に中途入社の場合、入社後3か月間が重要な判断期間となる
退職理由のギャップ:労働者と人事担当者の認識の違い
短期退職の理由について、退職者と人事担当者の認識にはいくつかの相違点が見られました。
上位4項目は両者で概ね一致していましたが、「残業・休日出勤が多い」「給与に不満があった」といった待遇面での理由については、退職者側の回答率が人事担当者の認識を上回っていました。
この認識のギャップは、企業の人事担当者が現場の状況を把握することに限界があることを示しています。実際に現場で働く従業員の声をしっかりと拾い上げ、待遇面の改善に反映させることが必要です。労働者側も、自らの声を効果的に伝える方法を身につけることが、長期のキャリア形成に役立ちます。
待遇に関して転職活動時に考慮すべきこと
- 入社前に残業や給与について具体的に確認することの重要性
- 待遇面での不満は会社側に伝わりにくい可能性があるため、積極的にコミュニケーションを取ること
- 転職活動時には、待遇面について詳細な情報を得るよう努めること
会社のケアに対する認識の差
入社1年目の社員に対する会社側のケアの充実度について、人事担当者の63.0%が「充実している」と回答したのに対し、退職者側では27.8%にとどまりました。この35.2ポイントもの差は、会社側が提供しているケアが必ずしも社員の不安や不満を解消できていない可能性を示唆しています。
短期退職者は制度に不満を持っている一方で、直接それが退職理由の上位に来ていないという結果も興味深い点です。これは、制度そのものが魅力的であっても、それを実際に利用する際のサポートや理解が不足していることを示唆しています。労働者としては、入社前にその会社の制度がどれほど実行されているかを十分に調査することが重要です。
会社のケア体制について労働者側が取るべき行動
- 入社前に会社のケア体制について具体的に確認する
- 入社後も必要なサポートを積極的に要望する
- 自分に合ったケアが得られない場合は、早めに上司や人事部門と相談する
短期退職がその後の転職活動に与える影響
短期退職者の29.0%が、その後の転職活動で支障をきたした経験があると回答しています。また、自己都合で1年以内に退職した経験がある求職者に対して、人事担当者の多くが一定の不安を抱えていることが分かりました。一方で、人事担当者の44.1%は「退職理由によってはネガティブな印象はない」と回答しており、短期退職が必ずしも致命的なデメリットにはならない可能性も示唆されています。
求職者としては、過去の退職理由を誠実に説明できるように準備し、その退職が新たなスキル獲得やキャリア改善に繋がったことを強調することが肝要です
転職を考える上で重要なポイント
- 短期退職には一定のリスクがあることを認識する
- 退職理由を明確に説明できるようにしておく
- 自身のスキルや経験が新しい職場でどう活かせるかを具体的に示せるようにする
退職代行サービスの台頭と利用の是非
「退職代行サービス」の認知度は短期退職者、人事担当者ともに80%以上と高く、実際に利用した短期退職者も6.4%存在します。さらに、今後の利用意向は50.0%と高まっています。利用者の90.6%がこのサービスを推奨している一方で、企業側の65.4%はネガティブな印象を抱いています。
退職代行サービスを利用するかどうかは、労働者側の自由ですが、サービスを利用せざるを得ない状況に追い込まれる前に、可能な限り職場とのコミュニケーションを試みることが最善です。
退職代行サービス利用の是非
- 退職代行サービスは有効なオプションの一つだが、使用には慎重な判断が必要
- 可能な限り、直接コミュニケーションを取って退職を伝えることが望ましい
- サービス利用を検討する場合は、その後のキャリアへの影響も考慮する
まとめ:短期退職と転職を考える上でのポイント
- 入社後3か月〜1年の期間が重要な判断時期となる
- 待遇面や会社のケアについて、入社前から具体的に確認し、入社後も積極的にコミュニケーションを取る
- 短期退職にはリスクもあるが、理由次第では必ずしもネガティブな評価にはならない
- 退職理由と自身の強みを明確に説明できるようにしておく
- 退職代行サービスは選択肢の一つだが、慎重に検討する
短期退職は、労働者にとってキャリアの転換点となる重要な決断です。会社側とのコミュニケーションを大切にしながら、自身のキャリアプランを慎重に検討し、適切な判断を下すことが重要です。また、転職を考える際には、単に現在の職場の不満点だけでなく、自身の成長やキャリアの方向性を見据えた選択をすることが、長期的な満足度につながるでしょう。
労働市場が変化し続ける中、自身のスキルや経験を客観的に評価し、常に新しい機会に目を向けることが、充実したキャリアを築く上で重要になってきています。短期退職を経験したとしても、それを次のステップへの学びとして活かし、より良い職場環境と自己実現の機会を見つけていくことが大切です。
入社後3か月〜1年の期間が重要な判断時期となります。待遇面や会社のケアについて、入社前から具体的に確認し、入社後も積極的にコミュニケーションを取ることが鍵となるでしょう。短期退職にはリスクもありますが、理由次第では必ずしもネガティブな評価にはなりません。退職理由と自身の強みを明確に説明できるようにしておくことが重要です。
退職代行サービスは選択肢の一つですが、慎重に検討する必要があります。自身のキャリアを見据えた上で、最善の選択を心がけましょう。